「あ、こんにちはミスト!」
「やぁ。元気にしてた?」
「ええ、この間すごく可愛いリボンを見つけたの。今度つけてくるね」
「うん楽しみにしてるよ。君はリボンがよく似合うからね」
「へへっありがとう!」
にっこり笑いながら話す彼女はすごく可愛いと思う。
おしゃれが好きな彼女はいつも首元に大きなリボンをつけていた。
別に彼女は飼い猫ではない。自分の趣味でやっているんだそうだ。
初めてと出会ったのは2年ぐらい前だろうか。
満月の綺麗な夜に散歩をしていたら屋根の上に座り、月を眺める彼女を見つけた。
偶然乗り込んでしまった船のついた先がここの近くだったらしい。
僕が声をかけると驚きながらも、嬉しそうに答えてくれた。
その時もまた、今日のように優しく笑いかけてくれた。
僕は彼女の笑顔にかなり弱いと思う。
可愛いから、というのは間違ってはいないけれど少し違うと思っている。
笑顔が可愛い猫なんてたくさんいるから。
でもの笑顔は何か違う。
すごく暖かくてほっとする感じだ。……うまく表現できないけれど。
「、向こうに綺麗な花畑を見つけたんだ。行ってみる?」
「わぁ、行きたい!教えて教えて!」
「そんなにせかさないでよ。ほら、こっちだよ」
花畑なんて僕の趣味じゃない。
彼女と出会う前なら見つけてもなんとも思わなかっただろう。
でも今は違った。花畑を見つけた瞬間、彼女の喜ぶ顔が思い浮かんだから。
そういえば最近街を歩くときもが好きそうだ、とか
に似合いそうだ、とかのことばかり考えながら歩いている気がする。
前にタガーに少し調子が変なんだと言ったら、
「あー、お前もそういう時期か」とわけのわからないことを言われた。
(まったくタガーは僕の話を聞いていなかったんだろうか!)
とりあえず考えるのをやめにして、早く彼女にあの花畑を見せてやろう。
きっとすごく喜んでまた、あの笑顔を僕に見せてくれるだろうから。
天才だって恋をする
20090208(調子がおかしいということが恋だということに気づくのは、まだ先のお話)