昔はまだ、この冷たい坂道も暖かかったんだ。





どうして全部隠してしまうのかしら。
私になら何もかもすべて言ってくれると思っていたのに。
でもそんなの私の思い違いで、彼女は何一つ私に話してくれることなんてなかった。
ただあなたが心配だっただけなのよ。日に日に疲れを増すその顔が見ていられなくて。
「大丈夫なの」と聞いても「平気よ、輝夜はすぐ心配するんだから」と笑って答えた。
それでも不安は拭えなかったけど強い彼女なら大丈夫なんだと思っていた。
誰だって平気なはずないのに、私はそれに気付けなかった。
だから今、私は過去の彼女を失ってしまった。
失ったものは二度と戻らないと言うけれど、そんなこと私たちに限ってないと思っていた。
でもそれも最初だけでだんだんやっぱりその通りなのか、と思っていく自分が嫌だった。


寒い北風が吹き付けるなか、石畳をゆっくりと進みのいる屋敷へと今日もまた足を運んだ。
彼女の元へいけば今日もまた静かに庭を眺めているだけだった。
持っていた荷物をおいてそっと彼女の近くへとよる。
白く透き通るような肌は昔は赤みがさして綺麗な頬をしていたというのに、
今ではすっかりその後も消え失せてしまっている。
緩やかに微笑むその姿は本当に綺麗だったというのにその欠片も見受けられない。
それでも、彼女を見て綺麗だという人はいるのだろうけれど。
の横へそっと腰を下すと今日もまた声をかけた。


「、今日も来たわよ」



「今日は外はとても寒かったわ。もうすっかり冬ね」



「昔はこんな寒い日でもと一緒だっとちっとも寒くなかったわ。不思議よね」



「、もうあれから一年がたとうとしてるのよ」



「ねぇ、いい加減喋ってよ!寂しいのよ、私、私ずっと待ってるのに……」


そう待ってるのよ、。
あなたが少しでも私の言葉を聞いて元気をだしてくれるのを。
また昔みたいに二人で笑いあいたいだけなのよ。
の痛みを少しでも分け合えるのならそれでいいの。
あなたを救えるなら喋らないままだっていいのよ。
ただ、の気がほんの少しでも楽になるならそれで、それでかわまわないの。
だからお願い。早く昔みたいに笑ってよ。あなたの優しい笑顔が見たいわ。
また二人でたくさんのこと話したいの。お花を見て綺麗ねって。今日の芸はうまくできたわねって。



そんな小さな願いもまた叶うことはなく、吹き付けられた風と共に消えていってしまった。








籠の鳥


ここにいるときから自由なんてないって二人ともわかっていたはずなのに、おかしいわよね












20090121
(ぼかろの夢みることりパロがしたかったんです・・・調子こきました・・・)