「ベル、ベルごめんなさい。私本当は知ってたよ」




「だからねぇ、ちょっとでもいいからしゃべってよ寂しいよ」




「私ちゃんとお祝いしてないのに……」




扉の向こうでずっと俺の名前を呼びながら謝ってくる可哀そうな子。

でもそれは俺の大切な子であって。だからこそあの時の君の言葉は嘘だと思った。

知らないなんてフリされるのだって十分に考えられたのに。

相手ならそんな愛しい嘘はいくらでも見破れたのに。

さっさと扉を開けてに俺もごめんって言えば済む話なのに。

でもそれは自分のなかのプライドが許さなくて。(こんな意地っ張りなプライドなんていらないのに)

自分の誕生日になんて馬鹿なことをしているんだろうとは自分でも思う。

でも嘘を見破れなかったのは本当なんだぜ。

一番に祝ってくれると思ってたから、だからその嘘はあまりにも衝撃的で。

どうしてはこんなにかっこ悪い王子の傍にまだいるんだ。もうほおっておけばいいのに。

まぁほおっておかれたらそれはそれでただ俺の機嫌が悪くなるだけなんだけどね。

他人のことを知らぬ間に傷つけてしまうことはよくある。だからそれは気にしはしないが

こればかりはよろしくない。愛しい女を泣かせてしまうなんて。

大体自分の誕生日だというのにこんなにも彼女に振り回されて

自分は一体何をしているのだろうとは思う。

でもやっぱりをほおっておくことはできなくて扉を開くことにしたのだった。




そっと扉を開いてをよんだ。

するとは入ってくるなり必死で俺に謝ってきた。

目の周りは少し赤く染まっていたので、きっと泣いていたに違いない。

「」

「っベル!ごめんなさい、私…私!」

「もういいよ、。いっぱい聞いたから。俺もこんなに追い出して、その……ごめんな」

「ううんいいの。悪いのは私だよ。ねぇまだ"今日"は終わってないよね?」

「あぁまだ、時間は少し残ってるけど」


そういう俺の言葉を聞いてすごく安心しながら、そして嬉しそうに俺にこう言ってくれた。


「Buon Compleanno!」

「っ?!」

「へへ、びっくりした?私この日のためにルッスーリアに教えてもらいながら覚えたのよ!

 発音が難しいのね、イタリア語は」

「ししっ、やるじゃん。じゃあ王子からご褒美やるよ」

「え、何?」



ちゅっ



とちいさなリップ音を鳴らして彼女の唇にキスをした。

目の前でみるみる顔を赤くしていく彼女がおかしくて、

それを笑うと「わ、笑わないで!」と怒られたがその表情もまた可愛くてたまらなかった。









Buon Compleanno!
(生まれてきてくれてありがとう、愛しい人)












(20081222 ベル誕ですよ。おめでとうベル! ちゃんは日本人orハーフ設定です。)