雨が、降っていた。
でも俺は傘もささずに暗闇の中、ひたすら走っていた。
街灯なんて立っている場所ではなくただ広いだけの明るさを失った庭を。
もちろん周りには誰もいない。俺はただ真実を、知りたかった。
先ほどのリーマスの言ったことが本当なわけない。
きっと俺と同じように傘をささないで、この先の花でも眺めてるに違いない。
笑いながら俺に向かって微笑んでくれるにきまっている。
何を馬鹿なことを話してるんだとリーマスが話してるときに思った。
ほら、ちゃんと、いるじゃないか。
月明かりに照らされて白い肌が青白くうつしだされている。
いつものようにやさしく、ふわりと微笑みかけてくれる。
やっぱりリーマスは俺に嘘をついたんだ。
あんな嫌な出来事、あるわけがないんだ。いいやあってはならないんだ。
彼女に触れようと手を伸ばしたとき、声がした。
「ねぇ、シリウス。」
「なんだ付いてきたのかリーマス。」
俺の後を追いかけて走ってきたらしい。
リーマスは久々に走ったのかかなり息を切らしていた。
リーマスまで傘をさしていない。これじゃあ全員風邪をひいてしまうだろう。
そう思いながらも会話を続けた。
「なんのことだリーマス。」
「さっきも言っただろう。はもう、いないんだ。」
「そんなことない!よくみろよリーマス。ここにちゃんといるだろう?」
「シリウス・・・・・・、君のほうがよくみるんだ。」
「何をバカなことを言ってるんだ?俺にはよくわからないな・・・・・・。」
「いい加減にしろシリウス!!はもう死んでしまったんだ。それはの墓だ。現実なんだよシリウス」
「そんなバカなこと、あるわけないだろ?だって今はここに・・・・・・。」
いない。
そこにいたはずのはいなくて、白い花植えられた花の真ん中に、墓がたっていた。
頭のどこかではわかっていた。ただ受け入れられなくて。こうなってしまった。
冷たい雨が俺の心をもっと冷やしていく。
どうしてこんなことになってしまったのだろう。
必ず戻ると約束したのに、がいなければ意味がないだろ。
「シリウス、戻ろう。風邪をひいてしまうよ。」
「俺はいい。まだここにいる。」
「・・・・・・そうかい。」
目の前にある墓に触れる。
温かかったとは違って、ひどく冷たかった。
やっと逢えると思ってた。嫌われてるかとも思った。けれど、に会えればそれでよかった。
それなのに、君はもういない。俺の手が届かない場所へ行ってしまった。
どんなに手を伸ばそうと届かない。叫び声をあげても伝わらない。
もう一度逢いたくても叶わない。は遠くに行き過ぎてしまったんだ。
ただ逢いたかっただけなのに。今でも愛しくてたまらない。
月がみせた幻
なぜ、こんなことになってしまったんだろう、なぁ誰か教えてくれよ。
20080404
久し振りの再会は、永遠に叶わないものとなってしまった。
イメージは月光花。ファンじゃないけど、この曲はすごく好きです。