気付いたその日から、濁った色だったあたしの世界は180度姿を変えて、鮮やかに色づいた。


世界が変わった日






特に嫌なこともなく、ただただ平和にすごしていた。今日も空は快晴で、窓から差し込む光が目を細めさせる。
朝早く起きるのは苦手だけれど、今日はなぜか欠伸もなく爽やかに目覚めることができた。

・・・が、少し起きるのが早かったらしく同室のリリーはまだ寝ている。リリーを起こしてしまわないようにさっさと
着替えて、朝の紅茶を飲むために談話室へと降りていった。


「んーまだ朝食には早いし、紅茶を朝から何杯も飲むのは気がすすまないし、何してよう・・・。」


そんなことを考えつつ、階段を下りていった。ドアを開くと、やはり朝早いため、まだ談話室には誰もいないよう
だった。いつもはにぎやかだけれども、今はとても静かで、ちょっとドキドキした。


「どの紅茶にしようかな。アールグレイかお気に入りのストロベリーティーか・・・。」
「おい。」
「それとも、ミントテイーにしようかな。すっきりしそうだし。」
「おい、。」
「・・・え、あたし?」
「当たり前だろ、ここにはお前と俺しかいないんだから。」


きっと違う人に話しかけてるんだと思った。リリーがジェームズと付き合ってるから、多少の関わりはあるが
彼と喋るということはあまりない。(リリーたちに混ざって軽くおしゃべり、ぐらいならあるけど。)だからびっ
くりした。でも、彼からしてみれば普通なのかもしれない。別に赤の他人なわけではないのだし。そうだ、何
をあたしはこんなにも驚いてるんだ。うんうん、そうだ、普通のことだ。驚くことはない。


「で、何のよう?」
「俺にもコーヒー入れてくれよ、ブラックで。」
「あぁ、うんいいよ。ちょっとまって。」
「おう。」
「そういえばシリウスって低血圧じゃないの?よくこんな時間に起きれたね。」
「偶然目が覚めたんだよ。自分でもよくわかんねぇ。」
「ふーん。あたしと一緒なんだねー。」
「お前もなのか?」
「うんそう。普段は朝早く起きるの苦手なんだけどなぁ。」


コト・・・


「はい、どーぞ。」
「おおサンキューな!」


なんてまぶしい笑顔だろうと思った。いやいや、人は誰だって普通に笑うものだ。シリウスが笑うのだって
全然普通だ。なのに、なんでだろう。彼が笑った瞬間、世界の色が変わった気がした。


暗い色が、いっきに明るく輝いて、鮮やかに色づいた。真っ白な花はあらゆる綺麗な色に染まり、少しくす
んだような色の空はそのくすみがきえて、澄んだ水色に染まり、壁だって床だって、この空間すべてが輝き
だした気がした。なんで、だろう。


いつの間にか時間がたっていて、談話室もだんだんいつもどおりのにぎやかさがでてきた。リリーも降り
てきていた。「おはよう。あなた今日は早いのね。」「おはようリリー。うん、自分でもびっくりだよ。」
といつもとなんら変わりのない会話をはじめた。


「いきましょ、朝ごはん食べなきゃ。」
「うん・・・あ、ちょっと待って。」
「シリウス、もう大広間行くね。」
「あぁ。じゃぁ後で。」


なんだろう、この胸の音は。今までは彼を見てもなんとも思わなかったのに。ドキドキが止まらない。あた
しは恋なんてものをしたことがなかったから、この気持ちがなんなのかよくわからなかった。


「リリー、恋ってなに?」
「あらどうして?」
「や、なんとなく。」
「ふふ、そうね。その人のことを考えると胸がドキドキして、顔が熱くなって、なぜか急に嬉しくなっちゃうの。」
「ふーん。(恋って複雑だ。)」
「もしかして。あなたシリウスに恋しちゃったりしたのかしら?」
「なっ!そそそんなわけないじゃない!!」
「あらそう。残念ね。(にもとうとう春が来たのね!)」








どうやら私は恋という病にかかったらしい。
20071107(気持ち。)