少し雲がではじめてる。きっと夜になる頃には雨が降りだすだろう。今日の天気予報でもそう伝えていた。
妙に生暖かい風が、私を嫌な気持ちにさせる。私は彼の無事をひたすら祈るしかない。
彼は必ず戻ってくるからと言ったけれど、やはり不安なものは不安だ。
はやく、はやく帰ってきて。一人でいるのはつまらないよ。



ポツリ



あぁ、雨だ。やっぱり降ってきた。この様子なら今夜は一晩中雨が降るに違いない。
軽い嵐のような雨。このままだときっと2人ともずぶ濡れになってしまう。風邪、ひかないといいけど・・・。














彼が、戦いに赴いてから2日が経とうとしてた。
彼はまだ戻ってきてない。少し、遅い。剣帝と謳われるほど、剣の腕は素晴らしいものだから。
私だって暗殺を仕事にする者。それぐらいわかる。
けれども2日も経とうとしてるのにまだ帰ってこないだなんて。


「神様、どうか彼が無事でありますようご加護を・・・。」


普段は暗殺を仕事とするものが、こんなときだけ神を頼るなんておかしいね。
しかも人の無事を祈るだなんてほんと滑稽な姿だと思うよ、自分でも。
だけど、このときばかりはどうか神様も目を瞑ってくれるはず。
時を刻んでゆく時計の針は、もう3時を示そうとしていた。
また一睡もすることなく次の日を迎えてしまっていた。こんなんじゃ、帰ってきたテュールに怒られてしまう。
そう思い、なんとか少しでも寝ようとベッドに入った。
否、それは急にノックをしてはいってきた隊員によりかなわなかった。



「申し上げます。・・・・・・テュール様がお亡くなりになりました。」



やはり神は私の敵だったのかもしれない。


事を伝えた隊員に連れられ私は彼の元へと足を運んだ。

私の愛した彼はとてもボロボロで傷ついてしまっていた。
ヴァリアー内の空気はとても異様だった。皆驚いてる。
剣帝と謳われるほどの実力の持ち主のテュールが、スクアーロという少年に2日間の闘いを経て倒れたのだから。
大切な人が倒れたというのに、私は冷静に物事を考えられた。
人ってショックが大きすぎると涙ってものは出てこないのかもしれない。


「これがあの剣帝だって言うの?」



「情けない話ね。たった2日間で倒れちゃうだなんて。」



「しかも相手は少年!信じられない話ね。」





「戻ってくるって、言ったじゃない。」


私の愛した人は嘘吐きでした。










愛する嘘吐き
嘘吐きは嫌いだって、前にも言ったのに。

(20071019 スクと闘って死んだテュール。みんなテュールを知らない。)